SPRING ★ SPRING ★ SPRING
早速女子はこそこそ話。


声を押し殺して言葉は聞き取れないようにしても
それだけちらちら見られたら内容の察しはつくって気づかないのかよ。


放課後のこんな教室は二度目の体験。


そもそも結衣との始まりがこうだった。


新学年が始まって
まだ一週間かそこらだった春の日。


帰りじたくをしていた俺を訪ねてきた結衣が
クラスの八割りがまだ残っている教室で大声で言ったのだ。


「一年の頃から好きでした。
つきあってください。」


と。


保澄結衣とは
確かに一年の時クラスメートだった。


しかし、それ以上でも以下でもなかった。


顔を見れば挨拶する程度の仲。


恋人はいなかったけど
結衣とよりはよほど親しい女子はいくらでもいたから
まともに話した事のない結衣からの告白なんて想定外で
かなり当惑しながら、このギャラリー付きの告白ショーに対応した事は
一種のトラウマのように深く記憶に刻まれている。


「えっと、とりあえずはありがとう。
でも俺、保澄さんの事よく知らないし
いきなりつきあうとかはやっぱ無理かな。
ごめんね。」


しどろもどろながら精一杯出した言葉はこんな感じ。
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