SPRING ★ SPRING ★ SPRING
とこれまた笑顔。


なかなか評判のいい中年の数学教師は
なるほど生徒へ歩み寄る努力が見られるし
評判はだてじゃなく捨てたものじゃないのかもしれない。


「俺、今から国立目指します。」


高2からは
国立組と私立理系組と私立文系組とそのた専門学校や就職組へと
進路ごとにクラス分けされたから俺の発言は我ながら手遅れだと思うし
そもそも結衣が私立大なら同じ所を受験するだろうと考えてふと浮かんだ思いつきにすぎなかった。


「そうか。」


だけど担任はまじめな顔で立ち上がり
ファイルをもって戻ってきた。


「勉強しなくても勉強できる奴は現代文が得意だと言うけど
それに違わず、渋沢は国語も得意なんだな。」


と感心した様子。


「え?
俺高1の時、数学以外みんな2ですよ。」


と聞き返す。


「そりゃ渋沢の事だ、
どうせ授業態度は悪いし提出物は出さないしだろ?
成績がいいわけがない。
一般的にお堅い教師は天才が嫌いだからな。」


と何でもないような風に言う。


「じゃあつまり
先生は一般的なお堅い教師じゃないんですね。」


と間髪入れずに嫌みを返したつもりだが
目の前の中年は嬉しそうにはにかんだ。
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