不埒な騎士の口づけは蜜よりも甘く

初めて会ったのは、もう思い出せないくらい昔のこと。


アリア王国に生まれた一番最初の王女は騎士をつけなければならない―――


そんな誰が決めたんだか分からないようなしきたりのせいで、わたくしは8歳の時に彼と出会った。オリビア伯爵家の三男坊だという彼は当時15歳。成人の儀を終えたばかりのまだ幼い容貌に、心なしかホッとしたのを覚えている。


「サラよ、これがこれからお前を護ってくれる騎士だ。仲良くやりなさい」


若き父王はそう言って傍らに控える少年を促す。
黙礼した後で、彼は私に視線を移した。


どくん、と。
子どもながらにその視線に目が離せなくなった。


「ディラン・オリビアと申します。以後、よろしくお願い致します、我が君」


漆黒の闇と見紛うほどの髪色、そこからのぞく鮮やかなエメラルド色の瞳。
どこか冷たい風貌の中に、凛とした美しさのある少年だった。


「……わたくしの名前はサラ。よろしくね、ディラン」


にっこりと微笑むと、彼はしばし瞠目した後でむっつりと黙り込んでしまった。
そんな私たちの様子を微笑ましく見守る父を覚えている。


……そして、時は流れ。


「―――はっきり申し上げましょう我が君、あなた、馬鹿ですか」


「はっきり申しすぎなのよ貴方!!」


どうしてこうなってしまったの。


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