不埒な騎士の口づけは蜜よりも甘く
するとディランはひとつ呼吸を置いていつもの如く眉間にシワを寄せる。
夜だからか乱れた髪の毛と、疲れた容貌は彼の容姿を実年齢より幾ばくか上に見せていた。
見ようによっては色っぽくも見える姿に、不本意ながらドギマギする。
しかしそんなわたくしの内心なんて露知らず、彼はこう言ってのけた。
「……ええ確かに。厄介なひとだ、貴方は。
私の言うことをまったく聞こうとしないのだからな」
「なっ……」
悪かったわね、そう続けようとしたわたくしの唇に彼の熱い指先が触れる。
瞬間、びくりと身体が震えて。
そんな自分が恥ずかしくて消えてしまいたくなる。
そんな私の仕草にディランは軽く笑う。上がった口角から艶っぽい声音が洩れて。
「………本当、手がかかる上に
目が離せないんだから、これ以上厄介な主はいない」
そしてくい、とわたくしの唇をなぞる。
拭うようなその所作に気付く。ああ、口の周りにミルクがついていたのね……。
「おやすみなさい、我が君。
良い夢を」
そして掛けてあったコートを取ると、振り返らずにディランは部屋を出ていった。
カチャリと閉まったドアを暫し見つめ、ついで顔がどんどん熱くなっていく。
な、なんなのよ、なんなのよなんなのよ!!!
思わず両手で顔を覆う。
―――――これ以上、わたくしの中に入ってこないで―――……。