不埒な騎士の口づけは蜜よりも甘く
いったいいつからだったろう。
その瞳を、その声音をその仕草を
すべてわたくしのものにできたらと
そんな救いようのない願望を抱き始めたのは。
明確なきっかけがあったようにも思えるし、そんなもの無かったような気もする。
ずっと一緒だった
初めて会ったあの日から。
最初の頃は彼はとても無口で
幼かった私はなんとか仲良くなろうと四苦八苦していた気がする。
『ねえ、ディラン見て!木登りーーー!』
『……それただ木にしがみついてらっしゃるだけです、我が君』
『ほら見てディラン!あそこに虹がかかってる!』
『雨が上がったからですよ。明日は良いお天気だといいですね我が君』
『ねえディラン!わたくしに剣術を教えて欲しいの!』
『………。私は、相手が誰だろうと容赦しませんがそれでもよろしいですか?』
『うん!』
それから少しずつ、少しずつ、それこそ本当に長い年月をかけて。わたくし達は城内外でも評判の姫と騎士になっていった。
あるときはわたくしを諌め―――――
『ディラン!わたくし舞踏会なんて行きたくないわ!』
『そのようなことおっしゃいますな、我が君。あなたはこの国の第一王女、ご公務だと割り切ってしまいなさい。……それに、せっかく珍しく殊勝な恰好をしているのですから、もったいないです』
『殊勝な恰好って……あなた、もっと素直に綺麗って言えないの?』
『……お綺麗ですよ、姫』
『…………っ』