生涯の人… 〜Dearest〜
「…遥…。」
周りからはロッカーの死角になって…、そこに居るのが嘘みたいに、遥が立ってた。
だって、遥が杏奈のクラスに来る事はこれが初めて。
今まで1度も来た事ないんだよ。
なのに何で…?どうして来たの?
見つめられたまま何も言えなくて。何か言いたげな瞳から動けない。
少しでも言葉を発したら…泣き出しちゃいそうだった。
「俺さ…」
「…?」
「俺…今色々考える事あって…。」
「うん…。」
「それはまぁ…自分自身の問題だったり相談受けてたりなんだけど…。」
「うん…。」
「いや…つーかそれは別によくてさ…。なんつーか…」
遥が何を言いたいのかわからなかった。
次に出てくる言葉を待って見つめ返した瞬間…、彼の口から、思いもよらない言葉が飛び出した。
「…面白く…なくて。」
意味がわからなくてじーっと遥の顔を見た。
「あれはー…元クラスの人…?」
「元クラ…あぁ、タケ?そう…だよ。」
「…そっか…。」
「…。」
「…。」
「遥?」
「あれは…、何で琉晴だけなんだよ。俺が炭酸好きなの知ってんじゃん…。」
何この人可愛い事言ってるの?本当に遥…?
口尖らして、拗ねたみたいに顔下に向けて。
可愛いすぎるんですけど…。
「遥も飲みたかったの?別に琉晴だからって訳じゃなくて、あれは完全に奪われたんだよ?」
服の裾を掴んで目を合わせた。
今度は逸らさないでいてくれるんだね。
可愛いんですけど…。
「それにタケは友達。仲は良いけど…それ以上にはならないよ。」
「…んー…。」
話している途中でチャイムが鳴った。
廊下にいた生徒が戻り始めてより一層騒がしくなる。
遥も自分のクラスに戻ろうとしてドアから離れた時…。
杏奈の聞き違いじゃなければ、それが遥の本心なのかな…?
戻る瞬間…。聞こえるか聞こえないか本当に小さな声で、
「俺って自分勝手だな…。」
そう…言ったんだ。