生涯の人… 〜Dearest〜
惚れたもん負け
あっという間に夏休みが始まった。
毎日学校に行って勉強しなくていい。けど代わりに、遥にも会えなくなっちゃった…。
夏休みってこんなに暇だったっけ?
そう考えると理由なしに会えてた学校は、杏奈にとってすごい事だったんじゃん。
学校の友達も地元に帰っちゃうし…寂しいな。
「ちょっと杏奈。何もしないなら部屋の掃除でもしなさい。」
「うーん…。」
家でゴロゴロしてたら掃除機をかけるお母さんの怒りの視線。
自分の部屋は自分でっていうのが伊原家の決まりだから、杏奈の部屋には手をかけない。
下手にいじられても困るんだけど…。
「そういえば明日出掛けるんじゃかったっけ?」
「…杏奈そんな事言ったっけ…?」
「えー…?凪ちゃんと出掛けるって言ってなかった?」
お母さんに言われて思い出した。忘れるなんていかに毎日だらだら過ごしてるか…。
携帯のカレンダーに書いてあったのは明日の日付で、
“凪とヘアーショー”
の文字。
「…やばっ…忘れてた。」
「あんたって子は…そんなだからおっちょこちょい…」
「わーかった、わかった!部屋の掃除するから2階行くねー。」
呆れるお母さんから逃げ出して自分の部屋に逃げ込んだ。
ふと…、部屋の出窓から空を見上げたら入道雲が浮かんで、夏特有の水色が広がってる。
絵の具で書いた様な鮮やかな色。
何処までも続く空の下で考えるのは、やっぱり遥の事。
明日…遥も来るのかな…?