生涯の人… 〜Dearest〜
モデルが歩く通路を照らして照明が動く。
光りに反射して相手の顔なんて見えないのに…。
見えないはずなのに。
どうして見えちゃったんだろう…。
反対側の客席にライトが当たった。
一瞬だったけど見間違える訳ない。
杏奈が間違えるはずない。
けど…見間違いの方がよかった……。
自分の視力の良さを後悔するなんて…。
なんで……見つけちゃったんだろう…。
会いたかったよ?
すごく会いたかったけど。
でも…こんな光景見ちゃうなら会いたくなかった…。
ライトに映ったのは遥だった。
一緒にいたのは…詩衣とあともう1人。
最近よく見かけるクラスの女友達だよね…?
ピンクのキャミソールに染めたてみたいなミルクティー色の髪。
見た目でもわかる位、胸が大きい百合ちゃん。
詩衣と仲良いんだよね…あの子。
百合ちゃんにそんな気ないのかもしれないけど。
女全開で遥の隣に居られるのが嫌だった。
音楽が大きいせいで遥の耳元で話してるのが見える。
見たくないのに…、縛り付けられたみたく視線が動かない。
百合ちゃんの笑い声が聞こえてきそうな位…。それ位2人をリアルに感じて、嫉妬っていうより悲しくなった。
百合ちゃんの瞳は…杏奈と一緒って事。
気付いちゃったよ。
あの子も杏奈と同じ…。
遥に恋してる瞳…。
どうしてすぐライバルが増えちゃうのかな。
遥の近くに居る子は遥を好きになる。
空気みたいな魅力に心を持ってかれちゃうんだ…。
ゆっくり深呼吸して視線をステージに戻した。
杏奈が恋する事を責める理由なんてない…。
恋愛は自由だし、遥が百合ちゃんを好きになる事も有り得るんだ。
そんな事考えるだけで…心が引き裂かれそうだけどさ。