生涯の人… 〜Dearest〜
「態度って何よ……杏奈笑ってたじゃん」
遥の扇ぐ風で前髪が揺れる。
日陰になっているこの空間だけは、今杏奈達だけ…。
そんな状況に心臓が異常な位速くなる。
「…笑ってない、膨れてた」
勢いよく扇がれた風が顔にかかる。
おでこが全開になって目をぎゅっと閉じた。
「膨れてないもん!ちゃんと笑顔だった!!」
「いーや、そう思ってたのはお前だけだろ…?あれは完全にヤキモチ妬いた顔だった」
「なっ…なっ…!!」
「…だろ?」
いたずらっぽく笑った遥と太陽の影が重なってく…。
「俺さ…勝手だけどね……んー、なんつーか……」
遥に隠れて太陽が消えた時、いつも意地悪を言う時の顔じゃなかった。
真剣…?それとも……。
「好きでいてくれんのは…杏奈だけでいいんだ…」
ニヤっと笑っておでこを叩かれた。
今杏奈、絶対赤くなってる。
それより…、そんな事言うなんてずるいよ。
期待したくなる。
遥の隣に居る自分を想像しちゃうじゃない。
「…何それ…。本当勝手だよ……」
遥に告白された訳じゃないのに、嬉しいなんてバカかもしれない。
だからすぐ騙されちゃうのかも…。
でもいい…。杏奈、バカでもいい…。
「顔笑ってんぞ…。杏奈、その顔が笑ってるって言う…」
「うーるさいから…。バカ…、アホ……見ないでよ」
振り回されてるはずなのにやっぱり好きで……。
叩かれたおでこが熱かった…。