生涯の人… 〜Dearest〜
夜の廊下はちょっと不気味で妙な静けさを保ってる。

誰かが歩く音さえも響いてくる位静か…。


多分ね、1人だったら怖かったと思うんだ。

でもタケがいてくれるから不思議と落ち着いた気持ちになる。



「ふあぁぁ……あー…ごめん…」

さすがに深夜を回る時間。

あくびをしたら、

「俺起きてるから寝ていいよ」

って気を使わせちゃった。


でもタケが側に居るなら安心だなぁ…なんて思って。

眠りに誘われるようにソファーに深く沈み込んだ。







―ブッブッ―


掌で握り締めてる携帯が振動してる…?


「アン…携帯鳴ってる」


相手も確認しないで受話器を耳に当てた。



『今どこ?』


耳に届いた声の主は…。



杏奈が諦めた頃に必ず連絡してくる奴。

そうゆう所が本当…憎らしい位ドキドキする。


そこに杏奈の心は引き寄せられちゃうんだ。



「今…は、ロビーにいる……」

『ふーん…』

「あの…出る時急いでて……部屋にルームカード置いてきちゃったみたいでさ。閉め出されちゃったんだ」

『まじで?ずっと1人で居たのかよ…?』

「いや…タケと……」

『…………』



タケが心配そうな顔で見つめてる。

そんな顔ばっかりさせてごめんね…。

いつも心配かけてごめん。


『ちょっと今から行くから』

「えっ、あっ…」

勝手に切れた電話の向こうでプープーって音だけが聞こえる。


「…何だったんだろ…ねっ…」






杏奈にとっては一瞬……、たったの一瞬だよ…?


曇った顔をタケは見逃さなかった。



「…アンさ、何かあった?……また気持ち振り回されてんの…?」


タケの言葉が重くのしかかる。


振り回された訳じゃない…。

そんなんじゃないよ。

ただね…、遥の気持ちがわからない。


杏奈が好きなの知ってるのに突き放しながらそれでも引き寄せる…。


遥の心はどこにあるの…?

杏奈の方へ…少しでも向いてるのかな…?

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