生涯の人… 〜Dearest〜
還奈さんを想う遥。
杏奈に優しい遥。
どっちも本当で…やっぱり胸をぎゅっとさせるのは遥しかいなくて。
泣いたって、追い掛けたい。
杏奈は遥を想う、一瞬の“今”を大切にしたい…。
「アンの気持ち…大切にしろよ。俺はお前の味方だからさ…」
杏奈の気持ちを察してか、ハハッて笑い飛ばしてくれる。
笑顔で側にいてくれるんだね…。
「ありがと……」
タケの笑顔につられて笑っちゃった。
胸の中がほっこりした気持ちになって、さっきまでの心が落ち着いてくる。
「あっ……」
杏奈から見えるエレベーターの入り口。
扉が開いたと思ったら歩いてくる遥の姿が見えた。
杏奈の前に立って…少し怒ってる…?
「部屋入れないなら連絡しろよ。まじ何やってんだお前…」
「ご…めん……」
「…ロビーじゃ風邪引くし……とりあえず俺の部屋来れば…?」
少し強い語尾。
ふて腐れた顔。
エレベーターに向かって歩く後ろ姿に…、バカみたいに愛おしくなった。
「タケごめん…ちょっと行ってくる…」
「……知らねーぞ…」
タケに謝った時にはもう…心が走ってた。
ぼそって言われた言葉だって聞こえなかった。
バカって…笑ってもいいよ。
しつこいって言われてもいい。
自分勝手で……ワガママで…。
寂しがりの遥の元へ……。
杏奈の運命は必然に変わったんだから…。