生涯の人… 〜Dearest〜

還奈さんを想う遥。

杏奈に優しい遥。




どっちも本当で…やっぱり胸をぎゅっとさせるのは遥しかいなくて。


泣いたって、追い掛けたい。

杏奈は遥を想う、一瞬の“今”を大切にしたい…。





「アンの気持ち…大切にしろよ。俺はお前の味方だからさ…」


杏奈の気持ちを察してか、ハハッて笑い飛ばしてくれる。

笑顔で側にいてくれるんだね…。




「ありがと……」




タケの笑顔につられて笑っちゃった。

胸の中がほっこりした気持ちになって、さっきまでの心が落ち着いてくる。


「あっ……」


杏奈から見えるエレベーターの入り口。

扉が開いたと思ったら歩いてくる遥の姿が見えた。



杏奈の前に立って…少し怒ってる…?





「部屋入れないなら連絡しろよ。まじ何やってんだお前…」

「ご…めん……」

「…ロビーじゃ風邪引くし……とりあえず俺の部屋来れば…?」





少し強い語尾。

ふて腐れた顔。


エレベーターに向かって歩く後ろ姿に…、バカみたいに愛おしくなった。




「タケごめん…ちょっと行ってくる…」

「……知らねーぞ…」



タケに謝った時にはもう…心が走ってた。

ぼそって言われた言葉だって聞こえなかった。




バカって…笑ってもいいよ。

しつこいって言われてもいい。



自分勝手で……ワガママで…。

寂しがりの遥の元へ……。





杏奈の運命は必然に変わったんだから…。





< 135 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop