生涯の人… 〜Dearest〜
「何気にしてんだよ…。いいから入れ。」
「…うん…。」
嫉妬の顔が見られない様に洗面所に駆け込んだ。
シャワーの蛇口をひねって熱いお湯を出したら、みるみる内に湯気で鏡が曇って…。
曇りガラスから覗く瞳。
嫌な顔…。
あかりにまでヤキモチ妬いて…今、すごく嫌な顔してる。
シャワーを頭から被って、ドロドロした感情を洗い流した。
さすがに酔いも醒めて、今の状況を考えるには頭が働き始めてる。
遥が杏奈を受け入れられない気持ち。
でも…杏奈を離さないのは何で…?
正直、自分勝手だと思うんだ。
杏奈を受け止める気もないくせに、気にかけてさ…。
でも好きだから。
杏奈は遥が大好きだから、そんな遥を追い掛けるし突き放さない。
突き放せないよ…。
だってこんなにも心の中を支配されてる。
指に触れたいって…頭を撫でてあげたいって…。
抱きしめて欲しいって…。
頭の先から爪の先まで叫びそうな位遥が好き…。
「…フッ…フフフッ……こんなに好きなのになぁ…。」
お湯を頭から被って目を閉じた。
冷えた体に温度が染み渡るよ。
お風呂を出て部屋に戻ったら、
「あれ…何で?」
さっきまであかりが寝てたベッドには誰もいなくて、遥の姿もなくて…。
ガランとした空間に1人残された。