生涯の人… 〜Dearest〜
遥のモデルは還奈さん…。
きっと、ショーをやるって決めた時から遥の中のイメージは還奈さんだったんだね。
迷いなんてなかったはず。
それが悔しくて…、その倍羨ましかった。
ずっと会いたかった還奈さん…。
顔も見た事がないしどんな人か聞いた事もなかった。
聞いたら……不安に押し潰されそうで怖かったから。
怖くて聞けなかった。
「そっか…還奈さんなんだ……ハッ…アハハッ…びっ…くり……」
正直ね…、会うのが怖い…。
還奈さんに会う事が怖い訳じゃない。
還奈さんと会った時の遥の反応を見るのが怖いの。
絶対に…杏奈が見た事ない顔で笑う…。
その笑顔見てショック受けちゃうんだろうな。
「まぁ…、今回の事はいいチャンスだと思う。遥と向き合うにはアンから近付かんとさ…」
「うん…、…うん……」
遥を見つめたまま…静かに決意した事があった。
“遥の想いから逃げない”
杏奈にとって1番向き合っていかなきゃならない事。
目の前で還奈さんに優しく笑いかける姿見たら苦しいのはわかってる。
でも…、逃げたくないよ。
鞄をぎゅっと握りしめて小さく深呼吸した。
風が吹き通すホームには遥達が乗る電車が入ってきてて、
「じゃぁ、また明日!!」
って手を振る笑顔。
またねって言える“今”を大切にしたいって…本当に感じた。