生涯の人… 〜Dearest〜
次の日の放課後。


何点かメイクのデザインを書き出した紙を持って諒士家に集合した。


ショーまで1ヶ月の時期にメンバー追加で入ったから用意もリハーサルも詰めてやらないと間に合わないみたい。


「結構急いで準備しないと間に合わないね!」

「だよねぇー…。モデルとも早めに会って決めていかないと…。あっ、ねぇ買い出し行く?」




昨日帰ってから考えたデザイン画を見ながら、詩衣と必要な道具を書き出した。


普通のメイクじゃなくて舞台映えする物じゃないと。

今まで見てきたショーもメイクにインパクトがあるとヘアーが際立ったりしてたっけ…。








美容雑誌をパラパラめくってたら肩を叩かれた。

振り返った場所には遥が居て、人差し指を玄関に向けてる。


外に出よう…って事でいいのかな?








「詩衣ごめん…ちょっと行ってくるね」


詩衣に断りを入れて遥が出てった後に付いて行った。





流星群を見た公園まで歩いてブランコに腰掛けた。

鎖の部分が錆びて、ギーって古い音が鳴った。

三つ編みみたいな手摺りに触ってみると久しぶりに嗅ぐ鉄の匂いが鼻を掠める。








「モデルの事だけどさ……還奈に…やってもらうんだ…」

「うん…聞いた……」

「俺は……絶対楽しいショーにしたいし笑っていたい…。…だから……杏奈も私情ははさまないで出来る…?」




私情……。



絶対出来るって言ったら嘘になる。



でも…、遥が辛くなるのは嫌だよ。






「出来る………楽しいショーにしたいのは杏奈だって同じだもん」




好きな人が幸せなら自分も幸せ。

そんなふうに思える程…大人になれない、


好きな人が想う相手に嫉妬したり、自分を見て欲しいって……。





何度願っただろう。




それでもね、遥の笑顔を守る為なら幸せを願えるのかもしれない。





それ位…、強くなりたい。



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