生涯の人… 〜Dearest〜
諒士家に着いてから還奈さんの採寸が始まった。

メジャーを持って測ってるのは…やっぱり遥。



還奈さんのサイズを測りながら笑い合う声が聞こえる。


「還奈太ったんじゃね?」

「うるさいしー…、これでも痩せたもーん」

「まじでー?この腕のぷよぷよはねぇよ…ハハハッ!」









耳を塞ぎたくなる…。

泣きたくないのに涙が込み上げてくるのがわかって…下唇を思いっきり噛んだ。



その意地悪な言い方も…。

あの笑顔も…。



還奈さんに向けられてた物だったんだ。

遥のこんな嬉しそうな顔知らない。


杏奈、こんな優しい声知らない。

遥の事なんて…何もわかってなかった。






動けない還奈さんにお菓子をあげて、振り向いた時に目を合わせて笑ったり。

杏奈しか気付いてないよね。


ねぇ…でもこれじゃぁ…。




杏奈の居場所がないよ。




私情ははさまないって約束したのに…。

笑顔でいられるショーにしたいのに。

現実を見る事がこんなに辛いなんて……。。




遥から逃げないって…、還奈さんへの想いから目を逸らさない事なんだ…。




これも自分勝手なの…?

好きな人のそんな姿を見て胸が痛くなる事も、杏奈の弱さなのかな?




「アン、メジャーとって!」

詩衣に呼ばれて我に返った。


「あっ、ごめんごめん!…えーっと、メジャーだっけ?」


渡しながら遥を見たら…。


ひどく、冷たい瞳で杏奈を見てた。



一瞬で逸らされた瞳。




還奈さんには優しい顔で笑うのに…。

頭ぽんぽんは杏奈以外にしたら嫌だよ…。



ずるい。





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