生涯の人… 〜Dearest〜
「じゃあ、またね」
「送らないで大丈夫か?」
「平気だよー、ここまでの道ずーっと真っすぐだったじゃん」
採寸も終わってしばらくしてから還奈さんは帰った。
送りたそうな遥…。
行きたいなら行けばいいじゃん…って、心の中で悪態ついた。
苦しくて、もやもやして自分の事も周りの事も嫌になる。
黒い汚いこの感情から…助けて…。
「杏奈…」
遥の冷たい声。
言われる事はわかってるんだ。
今日の杏奈の態度…。
いつもの公園に速足で歩く遥の背中が…怒ってる。
予想は出来てるのに緊張で足が前に進まないよ。
2人ベンチに腰掛けて拳1個分の距離で座った。
何も喋れない杏奈を見て先に口を開いたのは遥の方…。
「痛かった…?」
「えっ…?」
視線は…杏奈と交わらない。
前だけを見つめて静かに…ゆっくり話し出した。
「俺は…すげー痛かった……」
切ない横顔…責める瞳。
次に続く遥の言葉を聞くのが恐い。
「還奈と会った時の杏奈はさ、誰が見てもわかりやすい態度だろ…」
「…………」
「あれじゃ周りも気まずいし正直…やりづれぇよ」
言われると思ってた言葉…。
還奈さんを避けた杏奈は、見ていて痛かったんだ。
遥との約束を守れなかった…。
私情ははさまないって事。
笑顔でいられるショーにする事。
「俺は…、自分の感情で周りを巻き込むんじゃなくて楽しいショーにしたいだけ」
「…ん……」
「それが出来ないなら……いや…、まぁ…うん……今のはなし……」
「…ごめ……な…さい……」
痛む胸…叫びだす感情。
でも………
「俺は…杏奈なら最後まで出来るって思ってんだけど……どう…?」
「ん……ん……出来るよ………やらせて…」