生涯の人… 〜Dearest〜
自分達で衣裳を作るのは大変だからやめた方がいい…って、あかりに言われた。
時間もないしお金もかかる。
でも、やりたいって皆が言ったんだ。
手間がかかっても。
頭の先から足の先まで…。
杏奈達の手作りなんだよって見て欲しかった。
それに自分達が想像してる服がなかったってのも理由の1つ…。
手に入った材料と生地を持って諒士の家に戻った。
今日はマミがバイトで居ないから詩衣と裁縫セットを出して部屋の隅で始める事にした。
「てゆーかさ…?すごいよ……」
杏奈にしか聞こえない声で詩衣が呟いた。
「…詩衣…?」
作業の手を止めて詩衣を見た。
完成図が書いてあるデッサンを見つめて紙を指でなぞってる。
「あたしだったら……逃げ出しちゃうかもしれないもん」
「…あぁ……うん…」
詩衣の言おうとしてる事がわかった。
還奈さんがモデルで参加するって事。
側で…、平気な顔で出来るほど杏奈だって強くないよ。
でも約束した…。
遥と笑顔で終わろうって笑い合ったんだ。
だから頑張れるの。
あの日を境に変わろうって決心したから。
泣き出しちゃうかもしれない…。
弱音を吐くかもしれない。
けど、遥と過ごす日々を無駄なものにしたくないから。
杏奈が頑張った証に出来る様に。
「杏奈…強くなんかないよ。遥を困らせて……笑顔を失う所だった。…もう…遥を裏切りたくないの」
「裏切り…?」
“私情をはさむな”
そう言った遥の顔を思い出すだけで胸が張り裂けそうになる。
「うん……。遥とね…約束した事があったんだ。けど感情のコントロール出来なくて………。強く在りたいって想う事が今杏奈を支えてる…」
言ってて自分が泣きそうになった…。
杏奈を強くするのも弱くするのも、結局は遥の存在なんだ。