生涯の人… 〜Dearest〜
「何…これは…?」
「…何だろう。」
遥のハハって渇いた笑い声が響いた。
ねぇ…、遥。
どうしてそんな優しくするの…?
彼女以外受け入れられないくせに…―
だから今彼女の話したくせに…。
杏奈に優しくしないでよ…。
「杏奈が泣くから…、優しくしたくなった。
それが理由じゃダメ…?」
「…ズズッ……、ずるいよ…。それ…。」
遥の肩にもたれたまま、鼻水をすすった。
流れ出した涙は、自分でもびっくりする程自然に頬っぺたを伝った。
近くに居るとさらに香る甘い匂い。
杏奈の…、大好きな匂い…。
好きな人の香りって落ち着くし、記憶から消える事がないと思う。
いつか…、この優しい香りを嗅ぐ度に遥を思い出すのかな…?
遥を想って切なかった日を思い出すの?
「杏奈ってー…、俺の事好きなの?」
「…?!…なっ、なっ…、何っで平気な顔でそっ、そうゆう事…言うかな!」
意地悪な笑顔で…、犬みたいな顔で覗きこまないでよ…。
わかってるくせに聞くんだから。
「だって杏奈の顔って百面相。からかいやすいしさっ。」
「遥って…、超自意識過剰だし…。」
睨みつけて遥を見たらまたあの顔で笑ってて、ドキドキがさらに増した。
杏奈だけしか知っていたくない顔…。
意地悪な笑顔でもいいよ。
誰にも見せたくない。