生涯の人… 〜Dearest〜

冬のモデル。


双子を舞台に送り出してから祈る様な気持ちで胸を押さえた。



照明が落ちて真っ黒い生地に包まれた2人…。

目の回りだけラメを散りばめて唇の色も消した…イメージは氷の女神。



他のモデルと違った雰囲気を出す為にゆっくりと歩かせる指示を送った。




1歩…、また1歩進んで……。


最後にドライアイスが焚かれる。




「さいこー!!」

「いいぞー!遥ー!!」





誰かの声が聞こえた。



《7-lovers》の時間が終わってあかりチームがスタンバイを始める。



鳴り止まない歓声の中……スタッフとモデル全員で舞台に向かった。


自分が組んだモデルと頭を下げて客席に挨拶をしている途中…やっぱり泣き出す詩衣。

感情が表に出やすい彼女らしく言葉にならない想いが出たんだと思う。



「真琴ありがとねー」

「先輩ー…超かっこよかったですよぉ…」


ステージの上で真琴にお礼を言ってた時…。













            
杏奈も我慢したんだよ…?

泣きそうだったけど頑張ってこらえたもん。


けど…、もう無理みたい。




「…ありがと……」



客席の中に見つけた杏奈の親友。

大きく頷きながら笑顔で手を振る凪と目が合った瞬間…。



今までの想いが込み上げてきた。












泣いた事もあった。

逃げ出そうとした事もあった。



でも、その倍楽しい事もあったよ…。





「…ウウッ……ヒック…」

「やだやだー…先輩泣かないで下さ……きゃっ……」



顔を崩して泣き出す杏奈の肩に手が置かれた。

ぐって力が入って体が支えられる。



歩き出してくれたのは……。














            
やっぱり遥で……。








拍手が響く中…、遥の腕の中で子供の様に泣いた。




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