生涯の人… 〜Dearest〜
「そういや…卒業まであと3ヶ月切ったなぁ…」
琉晴の呟いた言葉に現実が押し寄せてくる。
卒業まであとわずか…。
毎日いた仲間と顔を合わせる事もなくなって。
一緒に過ごした教室も笑いの絶えない廊下も。
帰りに寄ったファーストフードも…。
当たり前だった事が当たり前じゃなくなるんだ。
「杏奈さ……、こんなに楽しかった学校初めてだから…。卒業とか本当実感沸かないんだぁ…」
きっと…、皆将来に対して少なからず不安を抱いてる。
楽しいばかりじゃいられない事も大人にならなきゃいけない事も。
充分過ぎる位わかってるんだ…。
でも……。
杏奈、まだ大人になんてなりたくないよ。
皆と離れたくない…。
「俺もさ、仲間と離れるんは辛いけど…離れても変わらんものってあると思う。……何年経っても俺らは変わらん…絶対……」
琉晴のつけた煙草が目に染みる。
それが…涙のせいなのかはわからないけど。
今は泣く時じゃないって事。
それだけはわかるよ…。
琉晴の言葉は遥と同じ。
重みがあって、強さがある。
言葉に芯が通ってるから杏奈も聞き入れる事が出来るんだ。
黄色くなった壁に吊された真新しいカレンダー。
諒士はまめな奴だから1日終わる毎に×印をつけてる。
あの印が埋まる頃には…。
きっと、泣く時がやってくる…。