生涯の人… 〜Dearest〜
「はい、スタート!」
先生の掛け声で試験が始まった。
静かな部屋で聞こえるのはカチャカチャ鳴るロッドの音だけ。
1つのテーブルに4人が配置される
杏奈の悪いクセ……。
隣の人の動きに焦る事。
“ワインディングは焦った人の負け”
担任が言っていた言葉が頭の中で甦るよ。
焦るんじゃなく隣の人のスピードの波に乗る…。
放課後…タケと居残りをしてた時。
杏奈とタケは似てる所があって得意科目と苦手科目がほぼ同じだったりする。
「タケが速いと杏奈も時間に入るよ!」
「俺も、俺も!アンが調子良い時はいけるもん!!」
国家試験ぎりぎりまで2人で練習を重ねてきた。
頑張ったもんね、杏奈達。
「はい、そこまで!!」
先生が手にしてるタイマーが鳴って終わりが告げられた。
自分の荷物を持って廊下に出ると端っこの方で杏奈を待つ姿…。
「終わったー!」
廊下中に響く声で叫んだ。
凪と笑い合いながら先生の指示で学校を出た。
水色にかかる夕焼けが降りてきて…眩しくて目に染みる。
杏奈達にとっての1番大事な試験が終わったよ…。
たくさん辛い事もあったし練習もした。
終わってみるとこんなもんか…って感じるけど。
まだ肌寒い冬の終わり…。
卒業のカウントダウンが始まった…。