生涯の人… 〜Dearest〜
いつもの公園に遥を呼び出した。
学校が家庭学習に入ったから遥と会うのは久しぶりだったりする。
空を見上げたら……雲と雲が混ざり合った。
白い雲がスピードを上げて前の雲にくっついた気がした。
杏奈が遥に寄り添うみたいで…なんだか可愛い。
まるで雲も恋してるような……。
届きそうで……でも、いつも届かない想い。
空に向かって手を伸ばした。
想いをこの手に掴もうとした時……
かかとを引きずる様な足音が大好きな彼の到着を知らせた。
穴の開いたジーパン。
履き潰したDCのスニーカー。
お気に入りのキャップに…大好きな…笑顔。
「…ククッ…何やってんだよ」
手を上げてる杏奈を見て今日も変な笑い声。
ベンチに腰掛けてから伸びをしてこっちを向いた。
「んー……っだぁ!………で?…どうした?」
夕日に透けて遥の焦げ茶の髪がキラキラ光ってる。
杏奈ね…、今まで何度願ったかわからない。
その瞳が、杏奈だけを見つめますように。
その笑顔が、杏奈だけに向けられますように。
その声が…、杏奈だけを呼びますように。
「どうって…そっか……えっとね、まずはお礼を言いたくて…」
「俺に……?」
無言で頷いて遥と向き合うように座り直した。
気持ちを伝える前にどうしても言いたかった事。
「…杏奈ね……遥と出会えてよかったよ。こんなに……遥を好きだって想える事が幸せな事だって教えてくれて…ありがとね。……杏奈と出会ってくれてありがとう」
「…………」
「好きになって……良かった…」
「…ん……」
「本当に…遥と逢えて良かった……」
瞳を逸らさないで言いたかった。
今の言葉だけで伝えきれない程の想い…遥には伝わるのがわかってたから。
杏奈の大好きな貴方だから…。
わかるよね…?