生涯の人… 〜Dearest〜
好き………。
好き……。
たった2文字の言葉。
それだけなのに…とても重くて。
簡単に口に出せる事じゃない。
たくさんの季節を過ごして色んな遥を見てきた。
諦めなって言われても…心が変わる事はなかったよ。
だってね…、杏奈には出来ない。
こんなに心が惹かれるのに…。
「杏奈はバカだよな…。傷付くのはお前なんだよ…?」
遥にそう言われても…それでも変わらなかった。
自分の心にだけは……嘘はつけなかった。
「杏奈の気持ちは変わってないからね……。遥の事が今も変わらず好き…」
頭の上で葉っぱのない木がカサカサ鳴る。
冷たい空気も今は慣れっこで、むしろ遥と居る時間を確かめるみたいに…。
深く……深く……体に刻んだ。
遥の…色素の薄い瞳が揺らめいてる。
少し潤んでるように見えるのは杏奈の気のせい…?
「…杏奈さぁ……」
「…ん……?」
沈黙の後に出た言葉は杏奈が予想だにしなかった言葉。
今まで遥に言われた言葉で…1番胸にきた。
「ありがとうなんて…俺の台詞だっつーの……!!……ったく…いきなり呼び出して何言うかと思ったら……俺がありがとうだよ…」
鼻を触りながらベンチの上で膝を曲げて座る遥が…小さい子供みたいに見える。
愛しさが込み上げてくる。
ねぇ遥……?
ありがとうって…お互いに感じてたんだね。
遥は杏奈にこんなにたくさんの気持ちをくれた。
杏奈に幸せをくれたじゃん…。
杏奈も同じような気持ち…あげてたって。
少しは自惚れてもいいよね…?