生涯の人… 〜Dearest〜
ぎゅって力が込められた後…遥は体を離しておでこにキスをくれた。
いつもふざけてるうちらにはありえない事で。
遥は簡単にキスとかしない人で…。
まるでドラマみたいに…、自然に瞳を閉じた。
遥との初めてのキス。
うちらにとって……精一杯の想い…。
でもさ…そんな事されたら杏奈の涙が止まらないって事。
わかってんのかな…。
「俺杏奈の事泣かせてばっかじゃん……はー…もぅ……どうすっかな…」
頭を撫でられて顔は見えないのに遥の困った顔がわかっちゃうの。
可笑しい位…。
やっぱりそんな遥が愛しくて…。
泣いてるのが勿体なくなった。
「…ンフフッ……遥困ってる………フフッ…」
「…お前なぁー……」
下を向きながら笑った。
遥のジーパンには丸い染みがついて杏奈の想いが溶けて…。
一緒になれたよ…。
頬っぺたを引っ張られながら親指で涙を拭ってくれる。
涙が横に流れて笑顔が溢れる…。
あぁ…、やっぱり杏奈は遥が好き。
悔しい位…好きなんだ。
笑い声が響く公園で思い出すのは遥との毎日。
「もう授業ないから次会うのは卒業式だね…」
「だな……俺等らしい卒業式にしような…」
ぽんって頭に手を乗せてよしよしって撫でてくれる手が…好き……。
ずっとあの手が羨ましかった。
還奈ちゃんを撫でたあの手が…。
還奈ちゃんを綺麗にしたあの指が…。
今だけは杏奈の事を想ってくれる魔法の指に変わる。