生涯の人… 〜Dearest〜

ぎゅって力が込められた後…遥は体を離しておでこにキスをくれた。


いつもふざけてるうちらにはありえない事で。

遥は簡単にキスとかしない人で…。



まるでドラマみたいに…、自然に瞳を閉じた。













遥との初めてのキス。










うちらにとって……精一杯の想い…。





でもさ…そんな事されたら杏奈の涙が止まらないって事。

わかってんのかな…。







「俺杏奈の事泣かせてばっかじゃん……はー…もぅ……どうすっかな…」


頭を撫でられて顔は見えないのに遥の困った顔がわかっちゃうの。

可笑しい位…。




やっぱりそんな遥が愛しくて…。

泣いてるのが勿体なくなった。





「…ンフフッ……遥困ってる………フフッ…」

「…お前なぁー……」





下を向きながら笑った。


遥のジーパンには丸い染みがついて杏奈の想いが溶けて…。






一緒になれたよ…。






頬っぺたを引っ張られながら親指で涙を拭ってくれる。

涙が横に流れて笑顔が溢れる…。





あぁ…、やっぱり杏奈は遥が好き。

悔しい位…好きなんだ。










笑い声が響く公園で思い出すのは遥との毎日。



「もう授業ないから次会うのは卒業式だね…」

「だな……俺等らしい卒業式にしような…」



ぽんって頭に手を乗せてよしよしって撫でてくれる手が…好き……。


ずっとあの手が羨ましかった。




還奈ちゃんを撫でたあの手が…。

還奈ちゃんを綺麗にしたあの指が…。



今だけは杏奈の事を想ってくれる魔法の指に変わる。





< 188 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop