生涯の人… 〜Dearest〜
「おはよー!」
「おはー!!アン袴可愛い!」
杏奈達の学校の卒業式はとにかく自由。
うちの専門学校しか知らないけどどこもそうなのかな…?
袴じゃなきゃダメ…とか、スーツじゃなきゃダメ…とかって決まりはない。
だからすごいんです。
先輩達から代々伝わる伝統みたいな物で、目立つならどんな恰好でも良いみたい。
あかりの仲良しな先輩なんてデパートの着ぐるみを着てきた人もいたって…。
今日のあかりは、動きやすいワンピースに黒のスパッツ。
頑張って肩まで伸ばした髪を2つに結んでる。
普段と変わらないあかりらしい姿。
いつも飾らないあかりがやっぱり好きだなって思った。
琉晴は…。
最後まで俺様スタイルを貫き通してた。
本当その勇姿に拍手だよ…。
「お見それしましたわ……」
両手を合わせて頭を下げた。
琉晴は凄みがある瞳でサングラスを下にずらしてる。
周りの乗客も絶対目を合わせたくないみたいで、下を向いてるのが妙に可笑しかった。
「何が?しっかし……お前普通やなぁー…。目立つ格好で来い言うたん聞いてなかったんか?」
「杏奈なりの正装なんですー…。てゆーか琉晴こそ目立つの意味ちがっ…いっ、いひゃひゃっ!!!」
朝から頬っぺたを引っ張られて何とも言えない笑顔をされた。
琉晴が杏奈をからかう時は本当に嫌な笑顔…。
もう悪さが顔に滲み出てるし。
でもそれ言ったらまたいじめられるから、これから先も彼にだけは言えない。
杏奈を普通呼ばわりする琉晴の本日の服装は…。
襟元にファーが付いてて背中の虎の刺繍が目立つジャケット。
今時見ないオレンジ色のサングラス。
完全にヤンキー仕様…。