生涯の人… 〜Dearest〜
3人で改札を通り過ぎて詩衣の姿を捜した。
詩衣はちっちゃいけど目立つの大好き娘だから…。
ドレスアップしてくるって事しか聞いてないけど、あの詩衣の事だもん…。
間違いなく今日地味な格好で来るはずがない。
「詩衣いなくない…?」
「いや…おらん事ない……。確か…遥も一緒に来るって言っとったけど…」
卒業生で溢れ返るロータリーを見回した。
杏奈と詩衣は毎朝待ち合わせして学校に行ってた。
詩衣がいつも立っていた場所にはスーツを着た男の子の集団。
「いないねー……、あたし詩衣に電話してみようか…?」
「ちょっ、ちょっ…あかり待って……!あれ…さ…」
柱に寄り掛かってる人の影。
一際目立つ2人が視界に飛び込んできた。
まだ3月だって言うのに露出の高い小柄な女の子。
エメラルドグリーンのホルターネックのドレスに、生花を頭に付けて足元はもちろんピンヒール。
もう1人は……。
どこかのバカ王子みたいな出で立ち。
マジシャンみたいなハットを被って新郎新婦のお父さんが着るようなモーニングスーツ。
極め付けはインナーのブラウスが貴族みたいにフワフワはみ出てる。
「ブッ…、アハハハハハハッ!!まじありえん!!」
最初に琉晴が噴き出した。
続くように杏奈とあかりまで笑いが込み上げて…。
杏奈達の声に気付いた遥と詩衣が歩いて来た。
「詩衣っ、お前最高!!鳥肌たっとるし!!」
「そうなの、そうなのー…超寒いんだよぉ!」
両腕を摩りながら詩衣が小さく屈んだ。
「まじウケるだろ?俺だって見た時笑ったもん!」
一緒に居た遥まで笑い声上げてる。
杏奈ね、この空気が大好き。
皆で馬鹿やって小さな事で大笑いして…。
記憶にすら残らない事でも、杏奈には残ってる。
ずーっとね…。