生涯の人… 〜Dearest〜
言葉が出ない瞬間って…、こんな時なのかな…―
杏奈…。知らない間に、傷に触れてたんだね。
「初めて名前見た時はびっくりした…。
こんな偶然ありえるか?って思った。
名前知って…、杏奈を見に行ったんだ。」
こんな時…、何て答えればいいんだろう。
杏奈には頷く事しか出来ないよ…。
「変な事言ってごめん。
つか…、期待させて…。俺なんて最低だよ?
俺…。まだ還奈以外は考えられないから…。
ごめんな…。」
泣きそうな杏奈を撫でながら、
「ごめん」
って、呟く遥を見たら…。
余計に胸が痛くて。
痛くて…、痛くて。
潰れそうだった。
あの時の遥の瞳を、忘れられないんだ。
遥の方が傷付いた瞳をしてた…。
何で?って思ってたけど…、遥は傷の深さを知っていたから。
言葉の凶器を知っていたから、泣きそうだったんだよね…。
貴方の心に…、気付いてあげられなくて。
ごめんね…ー