生涯の人… 〜Dearest〜
「いつまでたっても還奈を振り向かせる事が出来ねーし…。
俺に良いとこなんかあるのかなぁ…ってさ。
…ハハッ……珍しく…自信喪失。」
眉毛を下げて…力無く笑った。
いつも自分の信念を持ってて、還奈ちゃんへの想いにも迷いがない遥。
そんな貴方が…。
貴方の心が泣いてた。
杏奈に出来る事。
遥に自信をあげる事しか出来ないけど…。
「遥は誰よりも魅力的じゃん…。」
店内の音楽が流れる中、杏奈の声だけが響いた。
「杏奈が遥を好きになったのは自分を持ってるとこだもん!
いつでも自分に素直に生きてるじゃん。そんな事出来る人っていないよ…?」
「…。」
「遥を知る度に近付きたいって思ってた!その一途な所にもっと惹かれた!
…遥は……遥は…」
杏奈が遥に惹かれたのは、自分にない物を持ってる所。
杏奈が告白した時忘れる為に受け入れる選択もあったのに…。
還奈ちゃんへの想いを貫いた所。
かっこいいと思った。
悔しかった。
そんな…一途な遥をもっと好きになった。
杏奈も…遥にそんな風に想われたかった…―
「意地悪だけど優しい所とか…、周りを引っ張っていく所とか。
…ちゃんと人を叱れる所とか。
すごい素敵だもん!かっこいいもん!!」
「杏奈っ!!」
まくし立てて喋った瞬間、杏奈の目の前に伸びてきた細い指…。
遥の綺麗な指が遠慮がちに視界を塞いでる。