生涯の人… 〜Dearest〜
顔を伏せて……。
こめかみに力を入れて…。
俯いた横顔に光る涙が見えた。
「杏奈……もう…いいよ、ありがとう。」
「えっ…?」
遥が下を向いたまま目頭を拭ったのが見える。
下唇を噛み締めて、気付くかわからない位に手が震えてる。
「まじで…それ以上はやばいから…。…俺…嬉しくて泣く……。」
体育座りで膝を抱え込んだ、遥が見せた初めての弱さ。
そんな姿を見せてくれた事がすごく嬉しい…なんて変かな。
杏奈を特別って思ってくれてるのが嬉しい。
「だからね、遥。…自信持って大丈夫だよ…。」
包み込みたいような気持ちで遥の側に近付いた。
変だよね…。
これって母性本能ってやつかな?
2人の重みが重なってギシってソファーの音が鳴る。
人前で弱音なんて言わない遥が…小さく見えるよ。
もっと自信持って…。
もっと…、甘えてよ…。
だって、遥が頑張ってきた事知ってるもん。
ずっと見てきたんだよ。
少し乾いたおしぼりで遥の顔を叩いた。
涙を気まずくさせないように…杏奈なりに気を使ったつもり。
「バーカ……」
鼻をつままれていつもの意地悪な顔に戻ってる。
やっぱりこの笑顔がいい…。
遥は笑った顔が1番似合うよ。