生涯の人… 〜Dearest〜
―トゥルルルル―
って受け付けからのコールが鳴った。
終了10分前の電話でパッて現実に引き戻されたみたい。
さっきまでの時間が現実で今が夢ならいいのにね…。
そうすれば、こんなに胸が苦しくならない。
泣きたく…ならない。
「わりー…、俺本当に寝てた…?」
「…寝てたし……本当…失礼な奴…。」
寝ぼけてたくせに杏奈を見て瞳の色が変わった。
もう…やだなぁ。
遥は勘が良すぎるよ。
気付かないでいて欲しいのに…。
泣きそうな杏奈の心なんて。
だって、知ったらまた傷つくでしょ?
答えられない杏奈の気持ちに…。
自分を責めるんじゃないか…って。
「…俺……」
「もう時間みたいよ!とりあえず出ないと、ねっ!!」
遥の言葉を塞いで部屋を出た。
2人だけの空間…。
パタンって閉じた部屋が淋しく感じた。
駅で別れるまで一言も話さなくて。
でも、それで良かった。
きっと杏奈が話させない空気を出してたんだろうね。
遥はそれを読んで…。
さらに先まで読んで。
何も話さなかったんじゃないかな…?
でもそれで良いの。
話したら…、杏奈の蓋が溢れちゃうから。
もっと居たいって我がままになっちゃう。
「また…連絡する。ありがとな。」
ポンって頭に手を置かれて目を合わせた。
バイバイも言えなくて…、ただ無言で笑顔向けるしか出来ない。
弱い自分。
去ってく後ろ姿を見つめるしか…出来なかった。