生涯の人… 〜Dearest〜
「とりあえずさ、俺が決めて走っていい?」
遥に話し掛けられて我に返った。
行き先なんて…どこでもいいよ。
杏奈は……、遥と一緒だったらどこでもいい。
運転する横顔を見上げたら、悔しい位にかっこいい。
急いで窓の外に視線をそらして胸を落ち着けた。
このままさらわれてもいい…なんて、一瞬でも思っちゃった。
現実から逃げようとしてる?杏奈と遥は…一緒にはなれないんだよ。
これで…
2人で会うのは最期ってわかってるから。
だからわがままになる。
自分を忘れそうになる。
だって、止まらないの…。
ドキドキの音が破裂しちゃう……。
時間は0時過ぎ。
車が向かった先は…、諒士家だった。
「うっ…わぁ……懐かしい……。あの頃はしょっちゅう諒士家に集まってたもんね」
駆け上がるには辛かった坂道。
細い砂利道を歩いて日陰になってる所が諒士のアパート。
今は諒士も引越してここに来る事もなくなっちゃったけど……。
いつ来ても…思い出すな。
ひたむきに遥を追い掛けてた自分を…。
みんなで頑張ってたあの日々を……。
「公園…行く?」
口の端を上げて笑った。
大好きだった……
本当に大好きだった遥の笑顔。
あぁ……。何だか本当に涙が出そうだよ。