生涯の人… 〜Dearest〜
2人で話した公園は時が止まってるみたいに静かだった。


キィって聞こえてきそうなブランコ。



あの場所で遥に腕を引っ張られた。

遥と話したベンチ。



あそこで告白したんだっけ…。




「降りる?」

遥にそう聞かれたけど、首を振る事しか出来ない杏奈を…。

杏奈の気持ちを…。



遥ならわかってくれるよね。






この公園には思い出があり過ぎるから…。


もう少し…、もう少し……。

杏奈には時間が必要かもしれない。







遥との思い出を辿る様に車を走らせた。

せまい車内も、隣り合わせの席も。



ずっと…、杏奈が夢見た場所だった。


こんな風になりたかった。









運転する姿を見つめると、彼女になったような錯覚になるよ…。



ずっと遥の手を掴みたかった。

今、隣にある遥の手。




触れたいのに触れられない距離はあの頃と変わらないんだね。

そんな所だけ…変わらないなんて。


神様は意地悪だ。








「杏奈行きたいとこないの?」


煙草に火を点けて窓を開けた。

メンソール独特の香りが漂ってきて杏奈を素直にしていく。








「うみ……海が見たい…」







杏奈の想いは…

誰にも聞かれたくないから…。



遥と2人だけの場所へ、連れてって…。



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