生涯の人… 〜Dearest〜
「杏奈……結婚しちゃうんだな」
「………」
「人妻かよ……」
「………」
「…つか、人妻って響き何かエロくない?」
今にも触れられそうな距離。
遥のちょっとぷっくりした唇が動いてる。
杏奈を人妻って呼ぶ…。
結婚って言葉を口にする…。
……そんな目で…見つめないで。
遥が少しでも杏奈が好きなのかもって…錯覚しちゃう。
抱きしめられた腕の体温とか、遥の香りとか。
忘れられなくなるのがわかる。
早く離れないと……。
そう…わかってるのに。
そっと背中に腕をまわして抱きしめ返した。
ねぇ……?
杏奈には何も言えないけど。
今だけでも……、遥の側に居たい。
ワガママでも、自分勝手でも。
いつかは覚めちゃう夢でもね…。
遥とは歩けないから……。
シンデレラみたいな一時の魔法。
必ず解ける約束があるからこそ今を想ってしまう。
杏奈の心を揺さぶるのが得意な遥。
もう結婚が決まってるのにそんな事言うなんて……。
ずるい。
杏奈が必死で追い掛けてる時は振り向いてくれないのに……、友達に戻ろうと思った時は甘えてきてさ…。
突き放せないの知ってる癖に…ずるいよ。