生涯の人… 〜Dearest〜

「アンはさ…どうしたいだ?
確かに遥くんには想ってる人がいるみたいだけど。アンは待ってるだけ?」


凪の特徴的な方言。
痛い所を突かれて胸の奥が熱くなった。



凪の言う事は正しいよ。


杏奈は傷つくのが怖くて目を逸らされるのが怖くて…。

あの日に。あの告白した夜に…、遥の傷ついた瞳を見たのに。

1歩が踏み出せない自分に苛々する。




「何もしなきゃ後悔すると思う。
傷ついても遥くんとの距離変えようとする方が杏奈らしいと…。凪は思うだ。」


凪は何でわかっちゃうのかなぁ…。

杏奈ね、怖いんだよ。
遥に線を引かれるのが怖い…。
遥って奴は笑ってるようだけど…、一見優しそうな奴だけど。


実はすっごく冷たい人なのかもしれない。

相手を中に入れない人…。


自分の中にラインを決めてるような。
何かを追求してもはぐらかすのが上手くて、杏奈を絶対中に入れてくれないんだ…。


そんな時…、還奈さんを想ってるんじゃないかって。

そう思わずにはいられないよ。

拒絶される度に泣きたくなる。




「遥…、何をしてても還奈さんを思い出してるんだもん。杏奈にはわかる!
なんか入り込む隙間がない位遥の中では現在進行系なんだよね。」


皆で遊んでても遥は時々淋しそうな表情を見せた。

いつも見ている杏奈にしかわからない事…。



支えになってあげたいと思ったんだ。

杏奈に出来る事があれば何でもしてあげたいって…。


独りよがりなのかもしれない。
大きなお世話だと思う。


だけどね、遥に笑ってほしかった。





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