生涯の人… 〜Dearest〜
「超寒いし!」
真っ赤な鼻をした詩衣の口から白いわたあめみたいな息が出る。
天気予報では夜の0時過ぎからが流れ星のピークって言ってた。
11月の空気がぎゅっと凝縮されたような夜…。
こんな夜が大好き。
遥がいない中諒士家から徒歩3分の公園に来た。
詩衣からの情報…、あかりと両想いらしい彼。
琉晴(りゅうせい)
確かに…、イケメン。
端正な顔立ちで美容学生にしては珍しく黒髪。
ワックスで上手に立ち上げた髪が印象的だった。
琉晴の性格は…。
琉晴様って呼ばれるに値する位のジャイアンだと杏奈は思う。
って言うより単なるいじめっ子。
なんでか杏奈は琉晴のいじめストライクゾーンらしくて、会ったその日からいじられまくってるし…。
初対面なのに…ジャイアン琉晴…。
でもあかりとはすごく仲良しで、琉晴は気付いてないかもしれないけどあかりを見る瞳が優しい…。
上手く…、いってほしいなって思った。
「あ゛ー。寒い、寒い!!めっちゃ寒い!!」
「はいそこ、うるさい!詩衣静かにする!!」
静かな公園に詩衣とあかりの漫才みたいな声が響いた。
都内に近いって言ってもさすがに夜は刺さる様な寒さ。
頬っぺたも足の指も、感覚がなくなる位冷えてた。
諒士に毛布を借りて、詩衣と包まるように体に巻き付ける。
ぶらんこの下が外灯が届かない位置だったから、星が見える場所まで移動した。
「ちょっとまじで俺の毛布だからって勘弁してよー!」
みんなで笑いあってる瞬間が好き…。
空を見上げるとたくさんの流れ星…。
隣を見ると笑い合う琉晴とあかり。
片想いの相手にメールを打つ詩衣。
文句を言いながらもみんなのお世話をする、ちょっと笑える諒士…。
そして……
空を見上げながら遥を想うよ…。
会いたい…、会いに来て…。
鳴る事のない携帯をぎゅっと握りしめた。
切なさと共に……。