生涯の人… 〜Dearest〜

「超寒いし!」


真っ赤な鼻をした詩衣の口から白いわたあめみたいな息が出る。

天気予報では夜の0時過ぎからが流れ星のピークって言ってた。
11月の空気がぎゅっと凝縮されたような夜…。



こんな夜が大好き。



遥がいない中諒士家から徒歩3分の公園に来た。





詩衣からの情報…、あかりと両想いらしい彼。

琉晴(りゅうせい)



確かに…、イケメン。
端正な顔立ちで美容学生にしては珍しく黒髪。

ワックスで上手に立ち上げた髪が印象的だった。



琉晴の性格は…。

琉晴様って呼ばれるに値する位のジャイアンだと杏奈は思う。


って言うより単なるいじめっ子。



なんでか杏奈は琉晴のいじめストライクゾーンらしくて、会ったその日からいじられまくってるし…。

初対面なのに…ジャイアン琉晴…。



でもあかりとはすごく仲良しで、琉晴は気付いてないかもしれないけどあかりを見る瞳が優しい…。


上手く…、いってほしいなって思った。




「あ゛ー。寒い、寒い!!めっちゃ寒い!!」

「はいそこ、うるさい!詩衣静かにする!!」


静かな公園に詩衣とあかりの漫才みたいな声が響いた。


都内に近いって言ってもさすがに夜は刺さる様な寒さ。
頬っぺたも足の指も、感覚がなくなる位冷えてた。



諒士に毛布を借りて、詩衣と包まるように体に巻き付ける。
ぶらんこの下が外灯が届かない位置だったから、星が見える場所まで移動した。



「ちょっとまじで俺の毛布だからって勘弁してよー!」



みんなで笑いあってる瞬間が好き…。





空を見上げるとたくさんの流れ星…。

隣を見ると笑い合う琉晴とあかり。

片想いの相手にメールを打つ詩衣。

文句を言いながらもみんなのお世話をする、ちょっと笑える諒士…。





そして……

空を見上げながら遥を想うよ…。



会いたい…、会いに来て…。




鳴る事のない携帯をぎゅっと握りしめた。



切なさと共に……。





< 31 / 263 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop