生涯の人… 〜Dearest〜
こんな夜だからこそ…遥に会いたいんだよ。
切ない夜だからこそ、皆でいても遥が恋しくなる。
ねぇ…、何もいらないから。
側にいてくれるだけでいいから。
会いたいよ……。
「…ズズッ…ちょっともう無理だよぉ。…流れ星も見たし帰ろう…」
1時間近く外にいた。
靴の中の指は動かなくなって、足の先まで感覚がない。
詩衣の一言で皆で震えながら諒士家まで帰る途中…。
違和感…?
何か行きとは違う違和感を感じた。
何だろ、気になって仕方ないんだけどわかんないや。
うーんって口を尖らせて考えてたその時……
「アン見て!手っ!!手っ!!」
詩衣の興奮した声に振り返って見た物…。
琉晴とあかりが手を繋いだ姿…。
ピースサインをするあかりと瞳が合った。今までで1番女の子の顔をしてたよ。
何か幸せ…。
友達の幸せって、こんなにも満たされるもんなんだ。
すごい胸がいっぱい…。
しし座流星群の夜だからかな…?
これが流星群の奇跡…?
杏奈達にとっても嬉しい出来事だよ。
「よし、今日はお祝いだね!飲むぞー!!」
「詩衣はいつでも飲んでんじゃん!!やめてよ、お世話するの杏奈なんだからぁ。」
ねぇ…遥。
遥にも見て欲しかった。
あかりと琉晴がお祝いされてる今を――。
嬉しそうに笑う2人を…。
幸せな笑顔の2人を…。
一緒にお祝いしたかったよ。
お酒が入って珍しくウトウトしてきた。
深夜3時を過ぎた頃…。
遠くで聞こえるあの声は…――
「…っつ…。」
頬っぺたの痛みで目を開けた。
これが夢なのか現実なのか、寝ぼけたままの脳みそは活動停止中で…。
「…ククッ…何寝てんだバカ者。」
杏奈の前で笑うその人は…、笑いを噛み殺してた。
「…は…る…?」