生涯の人… 〜Dearest〜

「この酔っ払いがっ。」






夢を…、見てるのかな?


だって遥が居る訳ない。今日は地元で過ごすって聞いてたし、こんな時間に来る…?
杏奈が願い過ぎて幻でも見てるのかな…。



目をパチパチさせて寝ぼけた頭をフル回転させた。


「ひゃっ…ひゃんでいふの?(何でいるの?)」


頬っぺたを摘まんだまま遥は鼻で笑って、ぎゅっと上に押し上げられた。

杏奈の大好きなあの笑顔で…、笑ってたよ。



「やっぱ来たくてさ…終電で行けるとこまで来た。途中で電車止まっちゃってさー、そこから歩いて来た。」

「歩いて…?」

「んあっ。…俺歩くの好きだし。」



自分に言われた訳じゃないのに、”好きだし”のフレーズに胸がきゅんって大きく鳴った。


これが…、恋の音…?




ぺちって叩かれて、離された頬っぺたをさすった。

皆の輪の中に入る遥を見つめたら、ドキドキがさらに強くなって周りに聞こえちゃうんじゃないかって位大きくなってる。




「アン、やったじゃん。」

肩を叩かれて見上げたら、あかりの笑顔があった。

杏奈の赤く腫れた頬っぺたを見て、詩衣とあかりが笑ってる。



特別な夜はやっぱり好きな人と一緒に居たい…。

それが例え…、片想いでも…。






「杏奈、買い出し行くぞー。」

「えっ…、あっはい!」


煙草がない遥に連れ出されて、コンビニに向かった。

寒い中を遥の少し後ろを歩く…。



この距離が今の2人の距離感って思うのは…、杏奈だけかな…?

近いようで、まだまだ遠い。………遠いよ…。






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