生涯の人… 〜Dearest〜
はぁーっと息を吐くと白い煙りが立ち上がった。
冷たい空気は澄んだ空を映し出して、静かな住宅街に響くのは遥の鼻歌。
機嫌が良いのか杏奈の知らない歌を口ずさんでて、それに合わせて鼓動が弾んだ。
今一緒に居るのが夢みたい…。てゆーか夢?
絶対会えないって思ってたから、来てくれただけで嬉しくて心がぐにゃぐにゃに溶けちゃいそう…。
「…はっ…はくちょん!!」
「ブハッ…、はくちょんって何だよ!」
「…だって…、1時間位外に居たんだもん。それに今日寒す…」
言い終わる前に布が掛かった。
顔を上げると遥は上着を脱いで杏奈に被せてくれて、ポケットに手を入れてる。
「着ていいよ。俺歩いてきたから結構平気ー…、体暖まってるし…」
掛けられた上着から香水の香りがした…。
初めて会った日と同じ香り。
遥を思い出す香り…。
甘くて…、杏奈を誘惑する。
普通“誘惑”って言葉は女の人から男の人に使う事のが多いと思う。
でも…、杏奈は毎回誘惑されてるよ。
遥の甘い蜜に触れる度誘惑されてる。
いっその事、体に染み付いて取れなければいいのに…って思う。
そうすれば、いつでも遥を側に感じる事が出来るじゃん……。
寂しくないのに…。
「ねぇ、公園寄ってこうよ。遥が来る前みんなと行ったの!外灯が少ないから星が綺麗だよ。」
「俺ちゃんと星見てないんだよなー。結構見えた?」
「うん、杏奈も都内だからあんまり見えないかなーって思ったんだけどね!」
公園に向かいながらそんな会話をしてた。遥と話すと今だにドキドキするよ…。
慣れるなんて事、これから先もないんじゃないかな。
もうドキドキだけじゃ済まなくなってきてる。
恋が…、大きく膨らんで毎日大変なの。
「おー、見えるなぁ…。でも杏奈達が見てた時間が1番綺麗だったんじゃね?」
公園で空を見上げたら、上から星が降ってきた。
2人を包むような夜空からの煌めき…。
あぁ…。なんか泣けちゃう位綺麗だな…。