生涯の人… 〜Dearest〜
クリスマス当日は快晴……
って訳にもいかなく、どんよりした曇り空。
薄いグレーの空に白と水色…、それにほんの少しだけ黒を混ぜたような雲が浮かぶ。
「ますます気分が落ちるんですけど…」
電車から見える空を眺めながらため息が漏れた。
結局…、遥にクリスマスの予定は聞けなかった。
振り向かせるなんて……勢いこんだくせに、自分の願いを押し付けるような気がして。
誘えなかったんだ…。
そんな事考えてるうちにクリスマスになっちゃった。
杏奈って本当に臆病ってゆーか、護りに入っちゃう…。
ぼーっと流れる景色を見てた時メールの音で我に返った。
急いで受信Boxを開いたその相手は……
[つーか何で俺は誘わねぇの?俺も行くから諒士んち]
画面を動かす指が止まった。
だって遥は地元の友達と過ごすと思ってたから。
ずるいよ…。こんなの不意打ちすぎる。
弱りかけた杏奈の心にはこんなサプライズ刺激が強いよ。
一緒に過ごせるなんて思いもしなかったから…。
これが遥の気まぐれでも嬉しい事には変わらない。
一緒に…お祝い出来るんだ…。
「…よかった…、無駄にならなくて。」
鞄の中を見つめて呟いた。
渡せるかもわからないのに用意しちゃった、遥への…プレゼント。
引き出しの奥に眠ったままにならなくて、よかったな…。
諒士家の駅に着いたらデパ地下でケーキ買おう。
遥の大好きなモンブラン……。