生涯の人… 〜Dearest〜
「…んー、じゃぁとりあえず注文しよ。話しはそれから。ね…?」
力無く笑ったアユミを見て何だか胸が痛かった。
アユミは辛い恋をしてる…って。
聞かなくてもわかっちゃったよ。
「アン姉さ……、どうして好きって気持ちは言う事聞かないんだろうね……。どうして…、好きになっちゃダメな人を好きになるんだろ」
やっと声が聞こえたと思ったらそれは…、パスタを巻き付ける音に負けちゃいそうな位…。
ものすごく消えそうな声だった。
カチャカチャってフォークとスプーンが当たる音が…やけに耳につくよ。
「何いきなり…、どうしたの?」
「…う…ん……実はね…、今…付き合ってる人がいるんだけど」
「知ってるよ。千彰でしょ?…って、えっ?他に好きな人が出来たの?」
「違うよ!千彰で合ってるんだけど、そのー……、千彰がダメなんだってば…」
頭の中には?マークが浮かんで思わず眉をしかめた。
アユミには今付き合ってる彼氏が居て、うまくやってるんだと思ってた。
確か…、中学の時にも付き合ってたんだけど別れちゃって、久しぶり会って復縁したって聞いたけど。
「ごめん、説明不足だよね。うんと…、千彰のお母さんとか家族に反対されててさ……、実は今までも隠れて会ってたんだ」
「そうなの?」
「…なんか…変だよね……。好きなのに…、ただそれだけなのに…」
涙を浮かべて話すアユミを今すぐ抱きしめてあげたかった。
何で千彰の親に反対されてるかはわからないけど…、今の杏奈達は子供と大人の境界線。
ただ好きなだけで突っ走ったっていいじゃん。
それだけで…いいじゃん。
「何それ。千彰は親に従ってるの?」
「うん…。ほら、千彰の所もお父さんいないから……お母さんに従わないと家追い出されるみたいで。でも…アユミの事も好きだから内緒で付き合いたいって…」