生涯の人… 〜Dearest〜

指先の温度



5人で学校近くのカラオケに入った。

安くて学生のお財布には優しいカラオケ“air”はうちの生徒の率が最も高い場所。


コンビニの脇にあるエレベーターに乗って5階が受け付けになってる。

お菓子好きの詩衣がチョコとチップスを買ってみんなで乗り込んだ。


古いエレベーターは壁紙が黄ばんで決して綺麗とは言えない。

偶然にも杏奈の隣に遥が立って、ふわっと甘い香りがした。


香水にはあまり詳しくないけど男の人がつける香りじゃない位…甘い誘われる匂い。



でもちょっと意外だった。

どっちかって言うとシトラス系の香りなのかと思ったから…。


杏奈の知ってる男の人の香りって遥から漂う香りの人はいなかった。


それだけで、遥は特別なんだって思っちゃう。

鼻に焼き付いて…ドキドキする。







「俺コーラね。」

炭酸が好きだって笑った顔…。

悔しい位にときめいちゃう。


杏奈は炭酸が苦手だから忘れたくても忘れられないじゃん。



それにいちいち杏奈のときめきポイントを刺激してくる。

さりげなくおしぼり回してくれたり、皆の荷物まとめてくれたり。


それに…歌がすごく上手くて思わず聞き惚れた。



何て言うのかな?

ただ歌ってるだけじゃなくて、聴かせるのが上手い。


今思えば、杏奈が好きになってたからそう感じたのかもしれないけどね。



「アンも入れなよ!」

「あっ、うん。」

あかりに本を渡されてペラペラめくってた時、


「いつもどんなん歌うの?」


パッて…顔上げたら遥がいた。


「…っとね、何でも大丈夫だけど。」


恥ずかしくて…、指が見てないページを忙しく動く。

部屋が暗くてよかったと思った。


だって顔が熱い…。



耳の先まで熱を持ってて、赤いのがバレちうよ…。



「んじゃぁ…。」


遥は杏奈からリモコンを奪って番号を打ってる。

何を入れたのか教えてくれなくて、澄ました顔で画面を見ちゃって。





今指が触れた事、気付いてるかな…?


杏奈の指が心臓になったみたいに脈打ってるよ。



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