生涯の人… 〜Dearest〜

「さんきゅ……」

って笑った横顔に光が反射した…。


「いつもと立場が逆だよな……。俺がアンを慰める役目なのに…」



無理して笑うタケが痛々しくて、杏奈まで泣きそうになっちゃうよ。

胸が苦しくて、しくしくする。




「ちょっと…無理しないでよ……。何で杏奈の前で強がんの?」

「…フフッ…何だよ……、アンが泣くなよ、バカ…」



涙声なんてすぐにバレちゃう。


杏奈にはさ、遠距離恋愛なんて経験ないから…当人同士がどれだけ辛いのかはわからない。


“辛いよね、わかるよ”


そんな言葉…、言いたくないんだ。


だって同情にしかならないでしょ?

その時辛い気持ちなんて、どんなに近くにいたってわからない。

その人の気持ちがわかるなんて、思い上がりにしかならないんだから…。


逆に失礼だよね。
恋だって遊びじゃないんだもん。

その場限りの慰めで言うなんて、相手に対して失礼だよ。



辛い時に泣けない男の人は可哀相だなって思った。

それでも頑張ってるタケは…強いと思ったよ。



強いよね本当…、頑張ってるよね。






「タケ……頑張れなんて言わないよ。…こんなに頑張ってるのに言えない。ただ…、後悔だけはダメだからね」

「…うん。ありがとな」






頑張らなくていい。

無理しないでいいんだ。


だからね……








少しでもタケの気持ちが届く様に、杏奈祈ってるから。





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