生涯の人… 〜Dearest〜
男の人の足から逃げ切れるはずもなくて、坂を下る手前で捕まえられた。
犬を触るみたいに髪の毛をわしゃわしゃ撫でられて…。
セットされた頭はあっという間にぼさぼさになった。
「俺に手を挙げるとこうなるんがわかったか、なっ!」
「…うぅ…。」
これが琉晴流、愛のムチ。
楽しそうに笑い声を上げる満足そうな顔を見たら…、これ以上逆らえないのがよーくわかった。
きっと子供の頃はお山の大将だったんだよ。
うん…絶対そう。
「さっ、行こうや。」
「…はい。」
琉晴の後ろを歩いてコンビニに入ると、ふわっとおでんの匂いがした。
3月に入って暖かくなってきたけどまだまだ寒い風が吹く毎日。
匂いに誘われるようにレジに吸い込まれる。
「わぁー美味しそう…。食べたいなぁ。買っちゃダメ?」
煙草を選んでる琉晴に顔を移した。
杏奈には目もくれないで、
「…いらん。俺は食べたくないし。」
「別にいいもん。買うもん!」
「お前…そんなら最初から俺に聞くなや。」
バカにしたように笑う琉晴をよそに店員さんにおでんを注文した。
杏奈が待ってる間も人の髪の毛を持ち上げたり、頬っぺたを引っ張ったり…。
もう抵抗する気にもならなくて、好き勝手にやらせた。
店員さん…口が笑ってますけど。
「琉晴…。ちょっと聞きたいんだけどさ。
あかりと付き合う前って2人だけで遊んだりした?」
棚に伸びかけた腕を止めて考え込む。
眉間にのシワが増えて険しい顔になってる。
「んー…、カラオケとか行ったなぁ…。
でも基本俺ら語ったりしてた事のが多かったかもしれんなぁ。」