生涯の人… 〜Dearest〜
「ブフッ…クククッ……おい、杏奈。…ッ、ククッ…もう笑わないからハハハッ、待てってー…」
「…言ってるそばから笑ってんじゃん!もうっ!」
声を殺して笑う遥を残してすたすた前を歩いた。
杏奈よりも数メートル後ろの遥はジーパンに手を突っ込みながら歩いてて…。
もう笑わないって言うくせに顔は完全に笑ってるし。
遥に笑われる理由…。
杏奈のビリヤードの下手さ。
確かに杏奈の打ち方はひどかったと思うよ。
台に体が届かなくてへっぴり腰もいいとこ…。
そんなに身長が低い訳じゃないのに男性専用?って思った位だもん。
ビリヤードの台ってあんなに高いのかな?杏奈が知らないだけ…?
「いいんだもん…杏奈。球技苦手だから……しょうがないじゃん」
スポーツは苦手じゃないけど球技はまったくと言っていい程ダメ。
多分球技のセンスがないんだと思う。
「アハハハッ、球技苦手ってお前…、ビリヤードのセンスがないんだよ!」
膨れる杏奈の肩を叩きながら今度は遠慮なしに笑い出した。
「俺しばらく杏奈のネタで笑えるわ」
遥が触れてる肩が生きてるみたいにドキドキしてる…。
杏奈の事を思い出して笑ってくれるなら…いくらでも笑ってよ。
そんな事で遥が笑顔でいてくれるなら、杏奈…バカになる。
意地悪な笑顔。
からかってる時はいつも口元が上がるよね?
そういう顔…他の子にも見せてるのかな。
肩を…抱いたりするの…?