生涯の人… 〜Dearest〜


「っ…ごめん……。」

「杏奈…。」

「ごめんね、すぐ止めるから…ごめん。」





悲しげな瞳が突き刺さった。

困らせる事わかってるのに涙なんてずるいよね。


こんなの女の武器なんかじゃない。
よく…涙は女性の最大の武器って言うけど、遥のこんな顔見たかった訳じゃないんだよ。






「もう大丈夫…。」

杏奈が泣き止むまで歌ってた遥の鼻歌。
気づいたら慰められてた。

言葉なんかじゃない…。言葉よりも響いた貴方の歌声。



もう太陽が沈んだ空に、ぽつぽつって明かりが灯ってく。

暗闇の中で浮かぶ貴方の顔が…泣いている様に見えるのは気のせいかな。




「泣かせてごめん…。

杏奈の気持ち知ってるのに……ごめんな。」

「遥は悪くない…。」




杏奈が勝手に傷ついて遥を困らせてるだけ。



「これから…もっと泣かせる事言っちゃうけど…。
杏奈が聞きたくないのはわかってるけど。

聞いて…。」





やだって瞬間的に感じた。


言わないで…。

遥の心の中から杏奈を追い出さないで。




「今の俺はこんなんだからさ…、杏奈が望むような関係になれる可能性は…。


0に近いよ…。」













あぁ―…。

ほら、遥の方が傷ついてる。




言う方が辛い。そんなのわかってるのに…。

悲しい顔ばっかりさせて…ごめんね。



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