生涯の人… 〜Dearest〜
遥は還奈さんを…、杏奈は遥を…。
追いかけっこの気持ちなまま。
でもそれでいいじゃん。
好きな気持ちは誰にも否定出来ないよ。
ダメだって言われたって、心は嘘つけないから…。
駅に向かう道のりで遥の隣を歩いた。
今度は追いていかれないように…。杏奈の心を近付けたいから。
「ねー、遥。」
「んー?」
「0に近いって事はさ、0ではないんだよね…?」
「…ハハッ…うん。」
笑ってるし…。
杏奈の言いたい事をすぐわかっちゃう人。
その頬っぺたを引っ張ってやりたいよ。
「…むぅ…」
「ん?ククッ…むぅ…?
「むっ、ムカつく…。
どうせわかってるんでしょ?」
「わかんねーよ。伝えたい事は口に出さなきゃわかんねーっしょ?」
ククッてあの声を殺したような笑い方をして、杏奈の顔を覗き込んでくる。
あぁ…、やっぱり。彼の瞳には嘘がつけない。
「…言わない。」
「いいの?」
「…。」
「いいの…?」
ぷぅって片方だけ頬っぺたを膨らましたら、
「…ククッ…まんじゅう。」
って笑われた。
相変わらず鼻歌を歌ってる遥の横で…聞こえないならもう1度言ってもいいかな?
「すーきーだーよ…。」
声には出さないで口だけ動かしたのに…。
「…知ってるよ…。」
そう…笑った顔に、目頭が熱くなった。