同居相手は黒猫くん
——そうして帰る時間になった。
私達は駅でみっちゃん、佐久間くんと別れる。
「楽しかったー!」
大きく伸びをする。
夜はいい感じに冷えていた。
「…比乃」
「何ー?」
「…聞いて?」
え?
な、何を?
「もっと俺に聞いて」
「え、な、何を?」
「比乃が知りたいこと」
つまり刹は、質問してって言ってるの…?
な、なんでまた…。
「いや、今は特に…」
「駄目」
「えぇー!……じゃあ、好きなタイプ!」
「いきなりかよ」
だ、だって質問しろっていうから…!
「頭良くて美人で気が強くてスタイルが良くて馬鹿じゃない人」
「……私と正反対じゃん」
「え、もしかして「タイプはお前だよ」とか言われたかった?」
そう言いながら肩を震わせて笑う刹。
完全におちょくってる。
「違いますー!そんな人が好みなら早く見つけて付き合っちゃえばー!」
「ヤキモチ?」
「だ、だから違うって!!」
どうも調子を崩される。
刹はそんな私を見つめてきた。
「…もっと」
「…へ?」
「もっと俺のこと聞いて」
…変な刹。
いつものことだけど、何考えてるかさっぱり分からない。
でもそんな刹に私は弱いんだ。
「じゃあ、彼女いたことありますか?」
「さあね」
「え!?な…答える気なし!?」
「さあね」
「ちょ、またからかってるの!?」
「さあね」
もう!!
私は遂に怒って刹から顔を背けた。
刹が聞けって言うから聞いたのに!
ひどいよそれは!
ツーンとしていると、刹がふっと笑った気がした。
と、不意に後ろから抱き締められる。
心臓が飛び跳ねた。
すると刹は私の耳を甘く噛んだ。
ゾクッと背筋が固まる。
そして刹は片方の手を肩から腰へ移した。
それから、耳元に小さく囁く。