同居相手は黒猫くん
好きの感情
あの子が走り去ったあと、私達はしばらく何も話さなかった。
と、佐久間くんが口を切る。
「…それにしてもさ、ちょっと意外だった」
「…何が?」
「刹なら、ああいうのめっちゃ怒りそうだったのに」
そういえば。
前の三年生ともめた時は、めちゃくちゃ怒ってた。
けど、今回のはなんか…すごく大人しい。
ていうか怒ってすらいないみたい。
「…んー…そうか?」
刹はそう言って伸びをした。
……あ、
今ちょっと誤魔化した。
「でもまぁ、あいつ正直だよな。…まだ嘘ついてるけど」
その言葉にすごく驚いてしまった。
刹がこんな風に他の女の子を褒めるなんて、今まで一度もなかったから。
そして
こんな風に考えて、それでこんなに嫌な気持ちになってる自分にも驚いた。
「……あ、とりあえずさ!屋上行こう!」
その空気を察してか、佐久間くんは話を変えてくれた。
…私、また迷惑掛けてる。
もう嫌だな…。