同居相手は黒猫くん
「比乃ーーーーーー」
その大きな声に、私はギョッとした。
「あれ、こいつ例の転校生じゃね?」
「え、かっこいいこの子」
「2年?」
「てか比乃って誰?」
更にざわつく食堂。
慌てて振り返ると、案の定そこにいたのは刹だった。
食堂に出入りする生徒達、というか食堂全体が大声を上げた刹を注目している。
む、無理。
こんな中で刹に見つかったら私まで注目の的だ、絶対。
「みっちゃん、無視して。存在を出来るだけ消してっ」
「もう遅いわよ」
やけに落ち着いているみっちゃんの言葉にハッとし、慌てて振り返ると今度はバッチリと刹と目が合ってしまった。
……まずい。
「おーーいたいた」
刹は私を見つけると、ひょこひょことそのままこちらに向かって来た。
と、その時。
――ドンッ。
「痛…」
周りを気にせず私へ直行していた刹は、見事にすれ違った室谷先輩の肩にぶつかった。
や、やな予感……。
「……スミマセン」
刹はめんどくさそうに室谷先輩を見上げて謝っている。
……謝るだけましか。
良かった…。
「……ちょっと」
再び歩き出した刹を、室谷先輩は引き止めた。