同居相手は黒猫くん
「…何」
「何年?」
「2年」
室谷先輩の質問に即答した刹は、すぐさま私に顔を向けて歩きだそうとする。
「…名前は?」
「…柴咲刹。てか俺比乃のとこ行きたいんでもう呼ばないでクダサイ」
な、
なんてこと言ってるの刹!?
あの室谷先輩に向かって……!
「…比乃って…?」
呟くように言葉を漏らした先輩を今度は無視して、刹は私達の近くまで小走りで向かって来た。
ちらっと先輩の方に目を向けると、先輩とばっちり目が合った。
私は慌てて視線を刹に移す。
「せ、刹の馬鹿っ」
「は?」
「刹くん転校初日から注目されてるねー」
みっちゃんはくすりと笑って、食堂を少し見渡した。
食堂にいる生徒はより一層ざわつきだし、こちらへ視線を注いでいる。
ほんっと無茶苦茶だよ!
「あいつらうるさいし。ほんと目障り」
刹はそう吐き捨てて、ポケットから手を出した。
「なー比乃、たい焼き食いに行こうぜ」
「えっ、放課後って言ったでしょ!」
「俺弁当持って来るの忘れた」
ほんと馬鹿じゃん!!
「ほらお金あげるからパンでも買ってきなよ」
「うぃー」
刹は私からお金を受け取ると、再びポケットに手を突っ込んで購買の方へ向かってス走って行った。
「比乃ちゃん?」
と、
突然頭上から聞こえた澄んだ声。
声の主を見上げると、言葉を失った。
「…む、室谷先輩…?」
女子達がギャーギャーと騒ぐ声が遠く聞こえる。
驚き過ぎて、口をぱくぱくさせてしまった。
それも当然、
目の前にあの室谷先輩が私を見つめて立っているんだから。